「私もやってるんです」と頑なになった後輩へ、
私が伝えた"本当に大事だったこと"
新人時代から、ずっと見守ってきた後輩。
一つ先輩になり、自信もついた頃──
いつのまにか、本当に大切なものから、目を背けてしまっていました。
会社の後輩の、お話。
新人で入社してきた頃の彼女は、
ずっと年下なんだけど、ハキハキしていて、明るい子。
でもちょっと、おっちょこちょい。
過ぎたおっちょこちょいには、
時々、先輩のため息もあったりして。
それでも経験を積みながら、
彼女は彼女なりに、頑張っていました。
それなりにプライドもあって。
一つ先輩の立場になって
時間の経過とともに、当たり前だけど、
彼女もひとりでできることが増えていって、
いつしか後輩もできて、一つ先輩の立場になりました。
そのころは仕事もバリバリ、
発言も、より多くなっていって。
そして、なんとなく──
先輩の仕事への対応などに、
疑問を持つようにもなってきました。
「あ、でも、それって違いますよね」
「でも、あの時の私の判断は、
これこれこういう考えがあってのことで…」
「私はこうしようと思っていたんですが、
〇〇さんが…」
ハキハキに、頑固が加わってきていました。
成長のあかしでもあるんだけど──
それが、ちょっと鼻につく先輩もいたりして。
「なんですか、あの態度。
『でも』っていう前に、反省したのかしら」
「わからないのに経験があるから、
自分流でやっちゃうんだよなぁ、困るな」
なんて話も、私の耳に届くようになっていました。
でも、上司として、私は
でも、私としては、
彼女の仕事に対する姿勢は、ちゃんと評価していて。
何より、お客様を大切にする心。
それは、上司として、本当に、ありがたかった。
そんなとき。
イベントの担当に
彼女が、あるイベントの担当になりました。
日頃から、グイグイいく彼女のこと。
きっと「私はできている」と、自信を持っていたと思う。
んーーーー、大丈夫かな。
仕事は早いけど、見落としが多いし、
何より、その経験はまだ少ない。
先輩としっかり、相談しながらやってるかな?
ちょっと不安だったので、
彼女のプライドへも配慮しつつ──
ベテランの先輩に、サポートをお願いしました。
蓋を、開けたら
結果。
これまで先輩の仕事に疑問を持っていた彼女が出した企画は──
そんな彼女が企画したとは思えないほど、
不備が、たくさんありました。
日にちも迫っていて、相当の修正が必要な状態。
そのことを本人に伝え、
「少し厳しいけど、成功させるためにはやるしかない」と、
話をしました。
プライドが、崩れて
その後──
「できている」と思っていた自分の企画が、
完成度が低くて、多くの修正が必要だったこと。
プライドが傷ついたのか、
いつもの勢いが、すーっとなくなりました。
ある日、ベテランの先輩職員から、こんな報告が。
「修正を指示していた件、一向にやる気配がないです。
私も少しずつチェックしていますが、
時間的にギリギリです。」
念のため確認。
それは、驚くべき状態でした。
度々相談を受けてはいたけれど、ここまでとは。
そして、先輩職員に対する彼女の態度も、聞かされました。
アドバイスに対して、返答がないのは当たり前。
できないことを伝えると──
「私もやってるんです」
「ほかの人の企画も見ましたが、
もっとできてない人もいるじゃないですか」
「でも」「だって」の、連続。
先輩も、少しずつイライラが募り、
私のところへ訴えてきました。
「もう、一緒にやりたくない」
わかった。
あとは、私が。
そして、彼女と、向きあった
彼女の思いや、考えを、
一旦、ぜんぶ聞きました。
プライドが崩れて、気持ちも落ち込んでいるところに、
先輩のサポートを素直に受け止められる状態ではなかった彼女。
顔を真っ赤にして、感情をぶつけてきました。
私が、伝えたこと
ぜんぶ受け止めてから、私はこう話しました。
わかった。
一生懸命やってくれて、ありがとう。
感謝しています。
きっと、いい企画にしたいっていう思いは、
あなたも、先輩も、同じなんじゃないかな。
誰だって、完璧なんてない。
だから、悩むんだし。
経験が浅い中でこんなに頑張っているのも、ちゃんと知ってる。
二人とも、焦りもあったんだと思うし。
心が狭くなって、
「自分の方が正しい」「意見を曲げたくない」「負けたくない」が、
大きくなっていってしまった。
気がついたら──
大事なことが、何なのかも、わからなくなっていったんだね。
本当に大事なことって、ちがうよね。
もう一回、考えて。
お客様が、満足して、
笑顔で、楽しんでくれること。
じゃないかな。
そして──
今のあなたは、
そういう思いを大切にしていた、あなたじゃない。
少しおっちょこちょいでも、
一番はお客様で、笑顔を絶やさなかった、あなたじゃない。
今のあなたは、自分を守ることに、必死で。
あの笑顔で、笑えてたかな。
先輩も、言葉がきついことがあったかもしれない。
だけど、あなたをとても心配していたことも、事実。
あなたと一緒で、
イベントが成功して、お客様が楽しんでくれますようにと、
切に、願っていた。
そんな先輩の気持ち、あなたなら、感じていたんじゃないかな。
でも──
見えないふりを、したかった。
あなたは、そんな子じゃないじゃない。
ふてくされて、感情のままに言葉を並べて、
「自分は、自分は」と話す今のあなたは──
私がいつも、感謝の気持ちで見守っていた、あなたじゃない。
ごめんなさい。
あなたにこうして伝えなきゃいけないことは、私もとてもつらい。
大粒の涙と、私の涙
彼女は、大粒の涙をこぼしていました。
私も──。
そして彼女は、ぽつりと、こう言いました。
「ごめんなさい。
こんな話をさせるような状態にしたかったわけじゃないんです。
でも、どうしたらいいのか、もうぐちゃぐちゃで…」
「うん。
つらかったね。
やっと、素直に話せたね。」
ほんの少しの、ボタンの掛け違い。
ホッとしたのか、彼女はしばらく、泣いていました。
さ、やらなきゃね。時間がないぞ!
「もう時間も、あまりないから。
成功させるために、今から、全力でいこう!」
「ハイ、宜しくお願いします」
涙を拭いた彼女は、自分から、先輩のところへ。
「今までは、すみませんでした。
引き続き、よろしくお願いします」
先輩も、こう返してくれました。
「私も、年上なのに、気持ちこらえられなくて、ごめんね」
良かった。
前を向いてくれた。
ところが──
蓋を開けたら、
先輩が、数日後に、病欠。
えーーーーーーーーーー!!
仕方がない!
やるしかない。
まさか、こんなオチが付いてくるとは──。
神様、ちょっと盛りすぎでは…?(笑)
その先は、彼女と私とで、それこそ顔を真っ赤にして、
やり切りました。
イベントが成功して無事終わったころには──
二人で、言葉もなく、笑顔で泣いてしまいました。
そして、今
その日を境に、
彼女と先輩は、とても力強いペアになりました。
言いたいことを言い合いながら、
お客様の笑顔を大切に、頑張ってくれています。
本当に、ありがとう。
あなたへの問いかけ
成長していく過程で、
誰もが、一度はぶつかるものだと思うんです。
「自分は正しい」
「負けたくない」
「私だって、やってる」
でも、その気持ちが大きくなると、
いつの間にか──
本当に大切にしたかったものが、見えなくなってしまうことがある。
あなたが、本当に大切にしていたものは、何だったかな?
お客様の笑顔かもしれない。
家族の安心かもしれない。
自分自身の、初心かもしれない。
ふと、思い出せなくなったら──
一度立ち止まって、見てあげてね。
そして、もし、近くで支えてくれている人がいたら。
その人の「心配」も「願い」も、
どうか、そっと、受け取ってあげて。
── あなたの大切な気持ちが、ずっと、消えませんように。