「私がわるいの?」と泣いた同僚へ、
私が一緒に並べた"相手の視点"

熱心に仕事に向き合ってきた同僚が、ある日、涙を流して相談してきた。
「私が、何かしたの?」
その問いに、私はこう答えました──

別の事業所に在籍する、年下の同僚から相談を受けました。

彼女はもう中堅で、ほぼ通常業務はこなせる戦力。
数か月前、新人が入社してきたそうです。
彼女は教育担当ではないので、聞かれれば答えるけれど、
あまり口は挟まないようにしていた。

新人さんは人当たりがよく、控えめな性格。
積極的に発言するタイプには見えなかったけれど、
本人なりに頑張っているのだろうと、同僚は思っていたといいます。

時間の経過とともに、新人さんと業務について話す機会も増え、
その場で教えることも、少しずつ出てきていた──
そんなある日のことでした。

そもそも同僚は

そもそも同僚は、仕事にとても熱心な人。

サービス業ということもあって、
特にお客様への対応については、人一倍熱がこもっていました。

「良いサービスをしたい」
「お客様に喜んでもらいたい」
「自分の家族がこのサービスを利用した時のことを思えば、
満足してもらうように頑張るのは、当然のこと」

いつも、そうやって心を砕いている人でした。

そんな折、上司からの呼び出し

上司から呼び出された同僚。
なんだろう、と上司のもとへ向かいました。

上司の口から告げられたのは──

「新人から、指導が厳しすぎると訴えがあった。
教育担当ではないのに、なぜそんなに厳しく指導されるのか、と。」

一体、何のこと。
私はそんなに無理なことは言っていない。
当たり前のことを伝えたつもりだった。
教育担当からも、何も言われていないのに。

なぜ、なぜ。
私が、新人のストレスの存在に──?

彼女は、胸が苦しくなったと言いました。
そして私のところへ来て、涙を流しながら一連の話をしてくれたのです。

まずは、よく話してくれたね

まずは、こう伝えました。

いつも熱心に仕事に向き合うあなたが、
その仕事において、涙を流すほど心が痛んでいる。
それだけで、とてもつらいことだったでしょう。

よく話してくれたね。

同僚は、ぽつりぽつりと、こぼしていきました。

「新人に、裏切られた気持ち」
「直接話してもらえなかったことが辛い」
「全部、私が悪いのかな。」

確かに、今はそう思ってしまうと思う。
自分が一体、何をしたんだ、と。
そして、上司はなぜ新人からの言葉を私にただ伝えるだけだったのか、と。

私はこれまで、真面目に頑張ってきたのに──。

同僚は真面目に取り組んできただけに、悔しかったんだろうと思います。

何時間か経って、同僚がこぼした言葉

何時間か経って、涙はもう流していなかったけれど、
少し疲れた様子の同僚。

やっと、口を開きました。

「ねえ、どう思う?」
「同じ立場なら、何て言う?」

そうね、と私は話し始めました。

視点を、ひとつ並べてみる

今の自分の気持ちは、確かにつらいと思う。
始めは感情的になって頭に来るかもしれない。
新人に対して、嫌な感情も持つかもね。

ただ──
なぜなのか、理由は何なのかは、知りたいよね。
どうしてそんなことを、新人は話さなければならなかったのか。

いい感情での話ではないから、
上司に話すにも、勇気が必要だったはず。

当然、新人さんも、
話すまでは一人で悩んだ時間も、抱えただろうね。
自分の行き場のない気持ちを、どうしたらいいのか。
それしか、なかったのかも。

そんな部分って、どうなんだろうね?

同僚は、黙っていました。

たとえ感情的になる瞬間があったとしても、
一旦、相手のことを知ろうとすること。
まずは理解してみようと、少しだけでもいいから思うことは、
必要なんじゃないかな。

もうひとつ、上司の視点も

上司もそう。
なぜ同僚にだけ伝えたのか。
中堅であること、
常に実直に仕事に向き合ってきたあなただから、
きっと修正できる、と期待があったはずなんじゃないかな。

同僚は、ハッとしたように言いました。

「確かに。
自分のことだけだった。」

自分が、もし新人だったら。
同じ状況で、中堅の先輩職員から、なんて言われたい?

謝ってほしいわけじゃ、ないでしょう?
自分の気持ちや考えを、理解してほしいと思うはず。
あなたが、そう思うようにね。

だから、新人の気持ちとか、行動を、
理解できるよう、考えてみようよ。
私で良ければ、一緒に。

同僚は、さらに大粒の涙を流しました。

「全部、わかった。」
「ごめん、ありがとう。」

そして今、二人の関係は

そこから──

もともと実直だった同僚は、
その新人と仕事を通して、
お互いの足りない部分を補う関係になっているそうです。

同僚は笑って、こう言っていました。

「生意気なんだけど、
昔、私もなんか納得できないこと、確かにあったわ。」
「それと、一緒だ。」

切磋琢磨。
いい関係じゃん!

あなたへの問いかけ

誰かに傷つけられた、と感じたとき。
「私が、わるいの?」と、自分を責めたくなるとき。

その気持ちは、本当に、本当につらいですよね。

でも、ほんの少しだけ、こう問いかけてみる。

── 相手は、なぜ、そう思ったんだろう?

自分の痛みを、まずはちゃんと感じた後に。
ほんの少しだけ、相手の景色を、想像してみる。

すると、見えなかった「もう一つの視点」が、
そっと、隣に並んでくれることがあります。

── あなたの今日が、少しでも軽くなりますように。

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