君ですか、私の足を止めたのは
── 蝉の声のはなし
あまりに立派な羽音に、
つい足を止めて、見上げてみたら──
夏の、ささやかな出来事です。
蝉の声の、はなし。
私の職場はお寺が近いこともあって、
蝉の鳴き声が、とてもよく聞こえてきます。
「夏だなぁ」と、毎日思わせてもらっています。
蝉の音は、好きな人が多いですよね。
ひぐらしなんかは、特に。
役所への、行き帰り
ある日のこと。
職場から役所はとても近く、
用事があった私は、歩いて役所へ向かいました。
行く時も、それはそれは盛大に、
蝉が存在をアピールしています。
一応メスではある私に、ではないですけどね。(笑)
来た時よりも、大きな音
役所での用事を済ませ、戻る道。
来た時よりいっそう、
蝉が大きな音を奏でていました。
こんなに大きな音なのかと驚くほどの羽音。
一体どんな蝉が、こんな音を聞かせてくれているのかしら?
音の大きさに、ついつい、
その蝉を見てみたい気持ちになりました。
足を止めて、眺める
そして、その場にしばらく足を止め、
じっと音のする方を眺めます。
眺めた。。
眺めた。。。
いた!!!
なかなか立派な蝉が、熱心に鳴いている。
もちろん、私に向けてではない。
「君ですか、私の足を止めたのは」
見つけた嬉しさと、
子供でもない自分の行動と、まんまと蝉に引き寄せられたことに、
少し笑ってしまいました。
見られていたようです
その光景を──
少し離れた場所の工事現場から、
作業員のおっちゃん達が、同じく笑いながら見ていました。
はは。。。
恥ずかしさもあって、足早にその場を後にしました。
もちろん当の蝉君は、
「そんなこと、知ったこっちゃないんだぜぃ!」と言わんばかりに、
せっせと羽音を立て、熱心な活動を続けていました。
どうやら私はまだまだ
ほんの細やかな出来事だったけれど。
「夏だなぁ〜」と改めて感じたのと同じくらい、
どうやら私はまだまだ、
「紋紗の羽織」を美しく羽織れるような、
優雅に立ち振る舞えるような素敵な女性には、
程遠いようだぁ~なぁ~。やれやれ…
だけどね、夏の道草もたまにはいいと思いませんか?
大人になっても心の隅にしまってある、
懐かしいあの日の風景のように。
── こんな私なもんで、蝉君、もうしばらく眺めさせてもらうとしようかな。(笑)
nakamurayamama